イオの病室の前にいたのはシーナでした。


「シーナ?イオの様子は・・・。」


人差し指を唇に当て、シーナは言います。


「今、トラ君とイオがいい感じだから。もう少しこのままにしといてあげよう。」


シーナは微笑んでそう言いました。

私はイオに話したいことがたくさんあったというのに・・・。
トラの馬鹿。

けれど、今回は大目に見て差し上げますわ。



病院の待合室で、私とシーナは二人きりで時が経つのを感じていました。


「サボはどうされたのですか?」

「アフターケアだって言って行っちゃった。」


今回の計画はほとんどサボが考えたことでした。

その上アフターケアだなんて、やることはきっちりとやる人間なのですね。
それにほんの少し頭がいいと思ってしまいました。


「マコ、嫉妬したりしないの?」


突然そんなことを言われ、私はその言葉の意味が理解できませんでした。
けれどすぐにわかったのです。

だって、嫉妬のような感情が生まれていたのは確かですもの。


「無いといえば嘘になります。」


私は苦笑いで答えました。


「トラは私の古い友人ですし、イオは初めてできたまともな友人。
二人とも私の大切な人ですもの。」


私は友人としての嫉妬を二人に感じていました。

古くから私に付き従ってきたトラを、イオに取られてしまうという感情。
美人で素敵なイオを、トラに奪われてしまうかもしれないという感情。

どちらの感情も“嫉妬”という言葉が合います。


「けれどトラのお陰で、イオの男性に対する偏見が無くなればいいなとは思います。
あんなに美人なのに勿体無いと思いません?」

「確かに。」


シーナは笑って答えました。



嫉妬のような感情は生まれていても、やはり心のどこかではあの二人がうまくいけばいいと願っているのです。


乙女心も友情も厄介な感情には変わりありません。