どのくらい眠っていたのでしょうか。

すでに日は傾き、夕焼けが医務室を照らしていました。

具合もだいぶよくなり、少し頭痛がする程度。
カーテンの隙間から部屋を見渡しあの人の姿を探しても、当然そこに彼の姿がある訳がありませんでした。


けれど心のどこかで彼が来るのを待っている。
そんな自分がなんだか虚しく思えます。

すると医務室のドアが開きました。


まさかあの方が・・・?



けれどそこに現れたのはイオでした。


「具合はどう?
先生に聞いたら医務室だって言うから急いで来たのだけど、元気そうでよかった。」


イオはベッドの周りにあるカーテンを引き、日の光をベッドの中へと差し込みました。


「歩いて帰れる?それとも送迎車を呼ぶ?」


私は首を振りました。


「歩いて帰れますから平気です。
それよりイオ、私の話を聞いてくださいな。」

「何?またロリータ服の新作のお話?」


イオの意地悪な返事に、私は大きなため息をつきました。


「それはまた今度。
そのお話では無くて、私ね、今日とっても素敵な人に出会ってしまったのです。」

「あら、それはよかったじゃない。
どんな人?男?女?」


「男性です。
とっても素敵な・・・そう、まるで王子様。」


それを聞くとイオは呆れたように言いました。


「それってまた夢の中で例のフランス人の俳優に会ったとか言うんじゃないでしょうね?」


「違います!
本当に出会ってしまったの・・・。ああ、でも夢かもしれない・・・。
だってあんなに素敵な人、今までに見たことがありませんもの。」


するとイオはクスクスと笑って言いました。


「マコが男性に興味を持つなんて珍しいわね。
そのお話は後でゆっくり聞くから、取り敢えず校内から出ましょう?
見回りが来ると五月蝿いから。」


私はイオに同意し、校舎を後にしました。