全てを捨てて、私はロリヰタに生まれ変わりました。
それは少々前のお話。

何が起こっても私は何も関与しない、そう心に決めていました。
しかしキキのことは気になります。


ロリヰタでも以前の私でもなく、一人の人間として。


「トラ、私キキとは一度会っておきたいと思います。
なのでまた二人でここに来ていただけますか?」


私がそう言うとトラの表情は途端に柔らかくなり、私はほっとしました。


「キキもきっと喜びます。」


トラの顔を見て、私の表情も心なしか柔らかくなったように感じました。


「今日は本当にすいませんでした。じゃあ、俺はこれで。
お嬢さんも、ありがとうございました。」


トラはイオを見て微笑みました。
そして帰ろうと立ち上がった所に私が静止をかけます。


「待ってください。どうせ泊まるところなど無いのでしょう?
部屋ならいくらでもあるのですから、遠慮せずに明日までいたらどうです?」


トラは最初は断っていましたが、私が強い口調で言うと渋々首を縦に振りました。




私はトラの部屋の準備に、イオはお風呂へと行きます。


「姐さん、本当にいつも有難う御座います。」


ベッドメイキングをし終わると、トラがそう言いました。


「トラ、イオのこと変な目で見ないでくださいね。」


私が冷めた口調でそう言うと、トラは真っ赤になって動揺し始めました。
文字通り言葉を失い、目をまん丸にして私を見ています。


「貴方って単純だから見ていてすぐわかるのです。
色目とか、卑怯な手は使わないでくださいね。イオは私の親友ですから。」

「色目だなんて!」

「兎に角、私は貴方に恋愛をするななどとは言いません。
けれどイオに何かあった時には覚悟してくださいね。」


私はそれだけ言い残して部屋を後にしました。



トラってば、まだイオのことが好きだったのね。
トラは初めて会った時にイオに一目惚れをし、それ以来ずっとイオを熱っぽい目で見ていました。

まさかとは思いましたが今の今までその感情を変わらず抱き続けてるとは・・・。

おめでたい人間ですこと。