「遅っせーよ。」


図書室の一番奥の扉を開けると、サボに悪態をつかれました。


「なあ、今度から一番遅かった奴になんかさせようぜ。」

「だったらサボが一番有利じゃない。だって【集合】かけるのって大体サボしかいないもの。」


サボの言葉にイオがそう言います。



そう、私が意を決して携帯電話を購入したのはサボからメールが来るからでした。

授業中でも、休み時間でも、お昼を食べているときでも、【集合】の文字がディスプレイに浮かべばすぐにここへ来なければならないのです。

こことは勿論、この間シーナが下さった鍵で開く魔法の場所。
図書室の一番奥の扉を開けた、このベランダのことです。


すでにここは私とイオとサボ、そしてシーナの四人のお決まりの場所となっていました。


座る位置もすでに定着しています。

サボは扉を開けて左手の隅。
私とイオは隣り合って、ドアを開けた所の正面に座ります。
シーナはよく手すりによりかかっている時が多いです。


ここに来ては皆でお喋りをしたり、各々のしたいことをしたりしていました。



その時、私は丁度ある本を読もうと思い持って来ていました。

タイトルは『不思議の国のアリス』。
ルイス・キャロルの不朽の名作です。

勿論、挿絵はジョン・テニエル。


私はジョン・テニエル以外の挿絵の入った『不思議の国のアリス』を、『不思議の国のアリス』として見ることはできません。

金子國義さんの絵も、ディズニーのアリスも可愛らしいのですが、私の中ではやはりジョン・テニエルしか有り得ないのです。