雨音、独特の匂い、人通りの少ない路地。
何度も車が雨水を蹴っていく音を聞き、私はシーナの髪を拭きました。

雨に濡れたシーナの顔はすごく綺麗で、艶っぽい。


見惚れてしまう。


目が、離せない。


睫毛についた雨粒が宝石のようで、キラキラして綺麗・・・。

濡れたシャツから見える、体の線。
どれもこれも私をくすぐる。


雨の匂いに混じって、シーナの匂いがしました。


シャンプーと、高そうな香水の匂い。

それに混じる男の子特有の匂い。


五感を全て刺激され、私の脳みそは麻痺してしまいました。



だからこんな言葉を呟いてしまったのです。

















「・・・好き。」


















はっ!!!???

私何を言っているの!しかも一度ならず二度までも!



ああ、もう馬鹿馬鹿馬鹿!!!



けれどこのひどい雨の中、きっと蚊の鳴くような私の声はきっとシーナには聞こえていないでしょう。


意を決してシーナの顔を覗き見れば、明らかに驚いた顔をしていました。





聞こえてた!やっぱり!


もう、消えてなくなりたい・・・。



「シ、シーナ。い、今の言葉はその・・・何も意味は含まれてはいませんので、早急に貴方の記憶から消してください!」



もうその場にいることができなくなった私は、全速力でその場を走り去りました。



「マコ!待って!!!」




シーナに追いつかれないよう路地を縫いながら走りました。
あらゆる曲がり角を曲がり、雨で濡れても気にせず走り続けました。



その甲斐あってか、シーナは私を追っては来ませんでした。