ぼんやりとサボのことを考えていると、シーナは周りをきょろきょろと見てから私に小声でこう言いました。


「マコ、息抜きしたくない?」

「息抜き?」


何のことやら理解できない私はただ首をかしげているだけ。
そんな私を見て微笑み、シーナは私を手招きしました。


「おいで。」


有名私立の図書室は、数多の本で埋め尽くされています。
広い部屋の中には背の高い本棚がいくつもあり、どこの学校のものよりも大きいのではないのかと思ってしまうほど。

放課後は利用者が少なく、真面目な図書委員と数人の勉強家さん達が数人いるだけ。


その中をこそこそと動くシーナと私。
なんだかとってもドキドキする・・・。

シーナは手招きをしながら図書室の奥へと進んでいきます。
私は置いていかれぬよう、急いでシーナの後を追いかけました。


たどり着いたのは図書室の奥に人知れずあった小さなドア。

シーナは私を見て人差し指を唇の前で立て、声を立てぬようにと合図をしました。
そしてポケットから小さな鍵を取り出します。

私にはそれが魔法の鍵のように思えました。
目の前にあるドアが不思議の国へ繋がっているのかもしれないという錯覚まで起こします。

シーナは鍵穴へ鍵を差込みドアを開け、中へ入るようにと促しました。


中に入るというより外へ出たというほうが正しいのでしょうか。


そこは小さなベランダになっており、風が心地良い不思議な空間になっていました。



「綺麗・・・。」


遠目に見える山々は美しく、空は澄み渡り、雲が流れていきます。


この学校にこんなに美しい場所があったなんて、思いもしませんでした。