この日の放課後も私はイオを待つために図書室で時間を持て余していました。

この日はいつもより多く宿題が出たので、ひたすら数式を解いていました。


数式を解く間にもサボの言葉が頭を離れません。
シーナが同性愛者である訳が無いと何度も自分に言い聞かせましたが、振り切っても振り切っても頭から離れぬその言葉。

まるで獣に追いかけられているよう・・・。
苦しくて、怖くて、仕方が無い。


どうやったらこの獣を追い払えるのか、私は考えに考えある結論を導き出しました。



決めました。


シーナのことは諦めましょう。


幸いシーナとは昨日出会ったばかり。
彼の素性も知らなければ、彼がどんな人間かも知りません。

これから全く会わないように勤め、関係を断ち切ってしまえば私の恋心は薄れるのでは?


そうです。そうに決まっています。

元々私は男性になど全く興味がありませんもの。
想いを断つことなど容易な筈。



自分でもわかっています。

これが逃げているということ。
私が弱虫で意気地なしだと言うこと。
頭の悪い人間だということ。



けれど傷つくのは嫌ですもの。


物凄く、怖い。



シーナに面と向かって否定をされるのならば、自分から身を引くことを選びます。




そう、それが一番いい手段なのです・・・きっと・・・。



「どうしたの?ぼんやりして。この問題がわからないの?」


私はハッとして声の主を見ました。

そこにはシーナ、貴方がいたのです。