すると私の頭の中に妙な考えが過ぎりました。


「サボと恋人同士だったりして・・・。」


私がふとそう口走ると、イオは否定をします。


「それは無いと思うわ。」

「何故です?」

「なんとなく。」


私が意気消沈していると、イオは付け加えるようにこう言いました。


「けれどまだ本人の口から聞いた訳では無いのでしょう?
シーナに直接聞いてみたら?もしかしたらサボが嘘をついたのかもしれないし。」


シーナに聞いてみたいのは山々ですが、直に“貴方は同性愛者ですか?”などと聞ける訳がありません。

私の心はずっと悶々としたままでした。




 学校に到着し靴を履き替えていると、イオがいつも通り顔を顰めます。


「今日は何通ですか?」


イオは無言で靴入れから手紙を取り出し、私の目の前に差し出します。


「五通ですか?今日は割りと少ないほうですわね。」


これは朝の恒例行事。
ちなみに放課後にも同じようなことをします。

イオの靴入れに入っているのは勿論、男性方が愛を綴った恋文なる物です。
ほぼ毎日と言っていいほど恋文の嵐が止むことはありません。


「こんな物、資源と労力の無駄だわ。」


しかしイオはそれを全て破り去ります。

中身は決して読みません。
イオはいつもそうなのです。


「せっかく殿方が書いて下さったのですから、たまには目を通してみたらどうですか?」


私がそう問えば、イオは微塵と化した紙をゴミ箱に入れて言いました。


「男性なんて皆同じ。どうせ見てくれしか見ていないのよ。」


イオは冷たくそう言い放ちました。