「髪を下ろしているなんて珍しいわね。何かあった?」


通学路を歩きながらイオが私に尋ねました。

イオは何故こうにも私の異変に気付いてしまうのでしょうか?
いつでも私のことを気遣ってくれる・・・。


「あ、そうだわ。昨日サボのこと聞いた?」

「ええ。私のところにシーナから電話がありました。断りたかったのですけれど、サボが雨に濡れてまで訪問してくださったので・・・。」

「ごめんなさいね、マコ。私の家に泊めてもよかったのだけれど、お父様とお母様が許してくれないでしょうから・・・。」


イオの家は伝統を重んじる格式の高い家柄です。

その家の一人娘とあれば大切に育てられていて当たり前でしょう。
ご両親に認められていない男性を家に招待するなどもっての外。

私もそれくらいは理解しているつもりです。


「ええ、わかっていますわ。
そのサボのことなのですが、昨日おかしなことを私に・・・。」

「もしかして、何かされたの!?」


イオが真剣な表情でそう問いただすので、私はつい笑ってしまいました。


「まさか。サボは意外といい人ですから。」

「よかった。」


ほっと胸を撫で下ろすイオを見て、私は話を進めました。


「サボが、シーナについて変なことを言うのです。」

「どんなこと?」


イオは無言で私の次の言葉を待っていてくださいました。

言おうか言うまいかとても迷いましたが、イオは私の唯一無二の友人。
なので言おうと決心しました。


「サボは、シーナが同性愛者だっておっしゃるんです・・・。」


一度私の顔を見て目線を逸らし、イオは口を開きました。


「やっぱり。そんなことだろうと思ったわ。」

「知っていたのですか!?」


私がその言葉に驚いていると、イオは首を横に振りました。


「けれど昨日会って、何か普通の男性とは違う気がしたのよ。」


女性の勘というものでしょうか。

どうやら私にはそのようなものは微塵も無いようです。