シーナの温かな優しさが、私の心に流れ込んできます。

引き止めるつもりなどありませんでした。



ただ、伝えたかった。

私が貴方を想うこと。
何処へ行っても想っているということ。
本当は引き止めてしまいたいこと。
一緒に連れて行って欲しいと願っていること。

けれどそれができないこと。


全て伝えたかったのです。



「そのスケッチブックは、本当はラフスケッチ用だったんだ。
風景を書き留めておいたりしてた。

でも段々マコで埋まるようになってきちゃったんだ。

次は何を描こうかと思ってぼんやりすると、何故だかマコの顔が浮かんできてさ。
昨日はこんな顔してたっけ、なんて思いながら自然と手が動いて。

気付いたらページが終わってた。」


シーナはそう言って笑いました。


「それだけマコは僕の中で大きな存在になってるんだよ。」


私の瞳の奥を見つめ、シーナはそう言ってくれました。

そうして左手の薬指の指輪に口付けを落とします。
あの日、原宿のBABY,THE STARS SHINE BRIGHTで御揃いで買った薔薇の指輪。


「どのくらい先になるかわからないけれど、必ず迎えに来る。
この指輪に誓うよ。」


また、涙が溢れました。

悲しくて、けれど幸せで。


私はこらえきれずシーナに抱きつきました。




「私、待ってますから。」


「うん。」


「忘れないでくださいね。」


「うん。」


「イオとサボのことも、忘れないでくださいね。」


「うん。」


「お手紙、書いてくださいね。」


「うん。」


「帰って来れる時は帰って来てくださいね。」


「うん。」


「シーナ。」


「うん?」










「大好き。」













「うん。」