そんな時シーナから電話がかかってきました。

それは何気ない電話で、ただ一言。
「遊びに来ない?」とだけ。

サボもイオも用事があるらしく、一人ぼっちで寂しいのだとか。

もう少しで離れ離れになってしまうということもあり、私はシーナの家へと向かいました。


別れるまでの貴重な時間を無駄にはしたくなかったのです。

私の作り得る時間を、全てシーナに捧げようと決めました。




 シーナの家に着くと、離れへと案内されました。
相変わらず部屋には行かず、こちらで絵ばかり描いているようです。

扉を開ければ油絵の具の匂いがしました。

窓から差し込む光の中、真剣な眼差しで絵を描くシーナ。
それを見て涙が出そうになりました。


シーナが遠い人のように思えて仕方が無かったのです。



「あ、マコ!いらっしゃい。」


シーナは私に気付き、笑顔で出迎えてくれました。
シーナは手に持っていた道具を全て置き、奥にある小さなキッチンで手を洗います。


「紅茶しか無いけどいい?」

「ええ。」


この部屋にはテーブルや椅子が無く、シーナは紅茶を床に置きます。


「床でごめんね。しかもこんな汚い部屋で・・・。」

「構いませんわ。それにちっとも汚くなんかありませんもの。」


そう言うとシーナは微笑みました。


「急に電話したりして平気だった?用事とか無かったの?」

「ええ。何もすることが無くて退屈していた所だったので。」

「ならよかった。」


私は紅茶に口をつけました。

仄かに苺の香りがする紅茶は、私の視界を曇らせていきます。


陽の光に照らされたシーナはいつもに増して綺麗で、私にはそれが眩しいとさえ思えました。