猫とうさぎとアリスと女王

 パリ・・・。

私の中でその言葉がぐるぐると回っていました。


「パリに叔母さんが住んでいて、そこに下宿するならいいよって。
ずっと前から夢見てた学校だから凄く嬉しいんだ!」


まるでナイフで突き刺されような感覚。
痛くて、悲しくて、切ない。

けれどシーナの表情を見ていれば、私はそんなことを思ってはいけないのだと悟ります。

こんなにも嬉しそうな表情をしているというのに。
私一人がしょんぼりとしていてはいけません。


私は必死で笑顔を作って言いました。


「よかったですわね、シーナ。」


そんな私に、シーナはとびきりの笑顔でお礼を言って下さいました。


「ありがとう。」


その表情を見て、私は何も言えなくなってしまいました。




御免なさい、シーナ。


私は表面では貴方を祝福しながら、本当は正反対のことを思っています。



パリになど、行かないでください。

私は貴方とは離れたくはありません。
やっと近づけたというのに、離れ離れになるのは嫌です。



私はその思いを涙と一緒に呑み込みました。