猫とうさぎとアリスと女王

 膨れっ面の私を見かねて、サボは
「ひとっ走りしてくるわ」
とだけ言い残し、どこかへ行ってしまいました。


サボはすぐに戻ってきました。
手には四本のフォーク。


「サボ、それどうしたの?」


シーナの問いに、弾んだ息を抑えながらサボは答えます。


「調理室からかっぱらってきた。」

「お皿とケーキナイフは?」


イオの問いにサボは顔をしかめます。


「んなもん無えよ。」

「気が利かないのね。」

「五月蝿えな。いいだろ?フォークでみんなで突っついて食えば。」


全員にフォークが行き渡り、私たちは全員の顔を見渡します。


「それじゃあ・・・いただきます!!!」


四人が四方からケーキの砦を崩していきます。

私、こんな風にケーキを食べるのは初めてでした。
フォークのままケーキにかぶりつく、そんな下品なことしたことがありません。

けれど皆で笑顔になって食べるケーキは格別でした。

今まで食べたどのケーキよりも美味しく、楽しい。


サボは口の周りをクリームだらけにしながら、一際大きな口でケーキを呑み込んでいきます。
それが子どものようでとても可愛らしく見えました。