お父様も私とお母様に会いたいと願っているはずです。
けれどそれを押し殺してまで私たちの身の安全を考えてくれているのです。

しかし私はもううんざりでした。

この上ない安全な場所に住んでいても、大好きな家族と暮らせないのなら意味はありません。


「マコ、お母さんね、もう家に帰ろうかと思うの。」


私は顔を上げました。

今・・・お母様は何とおっしゃたのですか?


「ここで好きなことたくさんできたし、もういる理由が無くなっちゃった。
それにいい加減、もうほとぼりも醒めたころだと思うの。

だからお父さんにお願いしてみようかと思ってたところ。
“また三人で一緒に暮らしましょう”って。」


私はその言葉を聞いて嬉しくて仕方がありませんでした。

水の粒が、ぽたりぽたりと手の甲に落ちます。
私は泣いているのを隠そうと、必死で俯きながら涙を流しました。
嗚咽をこらえました。

お母様はそんな私の頭を撫でて、こう言ってくれました。


「マコ、御免ね。長い間寂しい思いばかりさせて。
跡継ぎのことも、もう考えなくていいのよ。お母さんから言っておくから。ね?
だからそんな風に、泣くことを恥じなくたっていいのよ。」


私はお母様の傍に駆け寄り、腕の中で大泣きをしました。


まるで時間が遡ったかのように。
子どものように。

大声で、何度も何度もしゃくりあげながら。