一週間ほど前、つまりサボとお墓参りに行った頃でしょうか。
何ヶ月か振りにお母様からお電話がありました。

お母様とお話をするのは本当に久しぶりで、声を聞いた瞬間に飛び上がってしまいそうなほどでした。


我が家はある事情により、お父様と同じ家には住めないのです。

なので私は都心より少し外れに一軒家を設け、そこに暮らしている次第。
お母様はと言えば北の大地、北海道にて牧場を経営しているのです。

お母様には昔から放浪癖のような物があり、お父様から“一緒に暮らすことはできない”という話を聞いたときも喜んでいました。
何せその頃のお母様は口を開けば“牛を育てたい”、“馬を育てたい”、“野菜を作りたい”の一点張り。

そうして念願の北海道へ旅立ち、望んだ生活を送っていたのです。



そのお母様からお電話とあって、私は喜ばない筈はありませんでした。

お母様は“今度の休日、遊びにでもいらっしゃい”と優しく言ってくださいましたの。
私は力強く頷き、休日を利用して北海道へと旅立ったのでした。

飛行機を利用するのは久しぶりで、何だか胸がドキドキしました。


だって久しぶりにお母様に会えるのですもの!
私は始終、顔がにやけていたに違いありません。


空の上から小さくなるビルや家屋を眺め、私は家族三人で暮らしていた時のことを思い出しました。


お母様と、私と、お父様。


それは決して静かで温かな家庭では無かったかもしれませんが、私はあの時が一等楽しい時間を過ごしていた気がしました。


お父様、今頃何をしてらっしゃるのかしら?



私、また家族三人で暮らしたいです。


あの家で。