猫とうさぎとアリスと女王

　「シーナ！私のお洋服は！？」


するとシーナは表情一つ変えずに返事をします。


「洗濯して、今干してるから。転んで汚れたから洗おうって言ったじゃん。
っていうかマコ、昨日のこと覚えてないの？」


覚えてません・・・。断片的にしか思い出せないのです！
言われてみれば確かにお洋服は洗って欲しいと言った気がします。

けれどあとのことはさっぱり・・・。


「普通に帰って来て、服を洗濯して、僕のシャツを貸してあげたんだ。
なんだかマコが凄く疲れてるみたいだったからベッドに寝かせたら、すぐに眠っちゃって。だから僕も隣で寝たの。」


「お洋服はシーナが脱がせたのですか！？」


「まさか。マコが自分でやってたから安心して。それとも・・・。」


そう言ってシーナは私を抱き寄せました。
私は自然と体勢を崩す形になり、シナの胸へと倒れこみます。


「脱がせて欲しかった？」


シーナは私の耳元でそう囁きました。
凄く思わせぶりな口調と声色で。

私はそのせいで真っ赤になってしまいました。


「やめてくださいっ！」


するとシーナはケタケタと笑いました。
私はそれを見て、なんだかほっとしました。


「いつものシーナに戻ったみたいですね。」


私がそう言うと、シーナは私と向かい合うように移動します。

そして手を握りました。


「マコのお陰だよ。本当に有難う。」


私は首を横に振りました。

私は何もしていませんもの。
お礼を言われるようなことは何も。


「僕さ、岳志のことすごく好きだった。もう綺麗に過去形に出来るようになったんだ。
凄くいい思い出。たぶん一生忘れないと思う。

だからちゃんと祝福してあげようと思うんだ。

月末の結婚式には行こうと思う。
ちゃんと笑って“おめでとう”って言ってあげたいんだ。」


シーナの顔はとても清々しく、綺麗な笑顔をしていました。
今まで見た中で一番素敵。
とても輝いているように見えました。


「きっと喜ぶと思いますわ。」


シーナは笑って


「だといいな。」


とだけ呟きました。