猫とうさぎとアリスと女王

 シーナは涙を流す私を抱きしめました。


「マコのせいだからね。マコがこんな所に連れてきたからいけないんだ。」


するとシーナの声が震えだします。


「タケの馬鹿・・・タケの馬鹿ぁ・・・。
僕、一年も待ってたのに。誰も好きにならないで待ってたのに!

あんな女の人より僕の方が若いし、スタイルだっていいのに!タケの馬鹿!

僕の方がずっと好きだったのに!ずっと前からタケのこと愛してたのに!
タケの馬鹿っ!タケの馬鹿っ!タケの馬鹿ぁっ!!!」


勢いよくそう言ったシーナはまるで子どものように泣き出しました。

うわーん、と駄々をこねた子どものように大きな声で延々と泣き続けました。
それを聞いて私は段々と苛々してきました。


「私のせいにしないでくださいな。

私だって岳志さんよりもずっとずっとシーナのこと好きですのに!
シーナの馬鹿っ!

私は岳志さんのようにシーナを置き去りになんてしません!
私の方がたくさんシーナのこと思ってるんですから・・・」


「タケのこと馬鹿にしないでっ!!!」


私はその言葉で口を閉ざしました。



「でも・・・ありがとう。」



私とシーナはずっと泣いていました。

それこそここに涙の池ができるほどに、ずっと。


子どものように言いたいことを言えるだけ言って、涙が枯れるまで泣いて。



まるで野生に生きる動物のように。



ずっとずっと泣いていました。




私たちは大人になれなくて、苦しくて、悲しくて、まだまだ子どもで。

大人になんてなりたくはないのに、大人になりたかったりで。



凄くわがままできまぐれ。



涙の川を泳ぎきったら、旅は終わるでしょうか?
悲しみは消えるでしょうか?
私たちは笑えるのでしょうか?



そんなことは、神様しかしらないのでしょうけれど。



けれど笑顔になれることを祈って、私たちは涙し続けました。