猫とうさぎとアリスと女王

 川の流れはゆっくりで、この忙しない世の中と相反するよう。
水面に夕焼けの光が当たりきらきらと煌く。
こんな景色、もう何年も見ていない気がしました。

ふとシーナの指を見れば、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTの指輪が輝いているのが見えました。

あの指輪、シーナは外さずにいてくれたようです。
勿論私も外さずにつけたままでいました。


「最初はどうでもいい話ばっかりしててさ。世間話みたいな。」


シーナはそう言ってふふっと笑います。


「なんで僕を置いて行ったの?とか、僕のこと嫌いになった?とか、聞きたいことなんて山ほどあったのに・・・。」


するとシーナは空を見上げました。


「結局何も聞けなかった。
気付いたら“今、幸せ?”って。それだけ口に出してた。そしたらタケは頷いてさ。

そうしたら、もうどうでもいいかなーって思えてきちゃったんだ。
何もかもどうでもいいやって。」


シーナの笑顔はとても痛い笑顔でした。
私の心をチクチクと刺すような、悲しい笑顔。

シーナは私を見て、噴き出します。


「なんでマコが泣くんだよ。普通逆でしょ。」


何故でしょう。涙が溢れました。
シーナが笑う度、私は悲しくなります。


「シーナ、涙を流したらどうです?言いたいこと、言ったらどうです?
無理に笑う必要なんてありませんわ。」

「無理なんてしてないよ。」

「嘘つき。」

「嘘なんてついてない。」

「じゃあ何故!!!」


私は涙を拭きました。けれどまだ溢れてきます。


「何故・・・そんな悲しそうな顔をして笑うんですか・・・。」




誰もいない川原で、私は泣きながらそう言いました。