猫とうさぎとアリスと女王

　「今日は。失礼ですけれど、どちら様ですか？」


私とシーナの予想を裏切り、突然部屋のドアが開き綺麗な女性が顔を出しました。


「あの、日比谷岳志さんのお宅ですよね？」

「ええ、そうですけれど・・・。あ、御免なさいね。
そのインターホン、画面が壊れててまだ修理していないんです。」


すると奥で男性の声がしました。


「智鶴、どうした？」

「お客様が来てくれたんだけど、貴方に用があるみたい。」


そう言って顔を出したのは、岳志さん本人でした。


「飛絽彦・・・。」


随分驚いたようで、岳志さんはシーナをずっと見ていました。

背の高い、顔立ちが整った、大人の香りがする男性でした。


「久しぶり。」


シーナはできるだけ微笑んでそう言いましたが、その笑顔は引きつりそうな程でした。
苦しそうで、けれど嬉しそうで・・・。

たくさんの感情が入り混じったような表情を岳志さんに送っていました。


「智鶴、ちょっと外してもらっていいか？二人で話がしたいから。」


智鶴と呼ばれた女性は頷いて部屋から出ました。


「そっちの可愛いお客さんも御免ね。」


岳志さんは私にそう言って下さいました。


そしてシーナと岳志さんは部屋の中に、智鶴さんと私は部屋の外に立ち尽くしました。


「ちょっとお散歩でもしに行こっか。」


智鶴さんは柔らかな笑顔で、敬語を使わずにそう言ってくれます。
きっと私を緊張させない為でしょう。

その馴れ馴れしすぎない態度が私には丁度いいくらいでした。


私は智鶴さんの後に続き、近くの公園へと向かいました。