静まり返った車内。
シーナと私の距離。
徐々に近づく岳志さんとの距離。

流石の私も少々緊張してまいりました。
その証拠にほら、手に汗が滲んでいますもの。

けれどそれ以上にシーナは緊張しているのでしょう。



岳志さんの家は閑静な住宅街にある一際大きなマンションにありました。

他のマンションよりも近代的で新しく、お値段も高そうです。
私とシーナはそのマンションを見上げていました。


「こんな立派な家に住めるようになったんだ・・・。」


シーナはそう呟きました。

私は受付の方にあることを申し出、セキュリティを外していただきました。


「お待ちしておりました。遠いところからお越しいただき、誠に有難う御座います。」

「無理を言って御免なさい。」

「とんでも御座いません。我が社の事業成功はお嬢様のお力が無ければ・・・。」

「それは私の力ではありませんわ。お父様に宜しく伝えておきますわね。」

「有難う御座います。」


わたしは一息つき、エレベーターにシーナと乗り込みました。


「知り合い?」

「お父様のお知り合いです。」


私、ああいう堅苦しいお話は苦手です。
お父様の事業のことを聞かれてもわかりませんし、お話を持ち込まれても困ってしまいます。

なのでシーナにもそれ以上聞かれぬよう、早めに話を打ち切りました。


岳志さんの家は最上階に程近い階にありました。
部屋の番号を確認し、ドアの前に立ちます。


「インターホン、シーナが押します?私が押します?」


ここのインターホンは来客者が画面に映り、誰が来たのかわかるようになっています。


「僕が、押す。」


シーナは震える指でインターホンを押しました。