猫とうさぎとアリスと女王

 何が幸せで、何が恋で、何が愛?
恋人など一度もいたことの無い私ですから、それを理解するのは難しいことでした。

シーナと岳志さん、二人の間にあるのは恋?それとも愛?
それとも別の何か?

考えるだけで頭が混乱しそうです。


「サボ・・・お二人、どうにかできないのかしら。」


そう問いかけても返事は返ってきません。


「サボ?聞いてます?」


ちらと台所を見てみれば、そこには禁断症状を抑えるサボがいました。
震える手を、もう一方の手で必死に押さえつけています。


「はっ・・・。見てんじゃねえよ。」


サボは自傷気味に笑いました。それを見て私の背中にぞくりと鳥肌が立ちます。


「貴方がいけないお薬を使用していることなどとうにわかっていましたから。
いい加減止めたらどうです?シーナも呆れてましたわよ?」


サボは震える手で煙草を吸い始めました。

煙草の匂いは大嫌いですが、今回ばかりは見逃してあげましょう。
ドラッグをやるよりは何倍もマシです。


「どうしようと俺の勝手だろ。新しいクスリなんだと。だからタダ同然で取引してくれんだ。」


サボはニヤリと笑いました。


「馬鹿なことを言うのは止めてください。ドラッグを止める為ならば私はいくらでもサボに協力します。
だからシーナを困らせたり、イオを悲しませるようなことはしないでくださいね。」

「その為にこうやって気い紛らわしてんだろ。」

「どこで取引をしたのですか?誰から買ったんです?」

「言える訳ねえだろ・・・。俺が殺されちまう。」


私は深いため息をつきました。

けれどサボは多少なりドラッグを止める努力はしているようです。
それだけでも救われました。


「兎に角、密売人とは縁を切ること。さもなくば私がサボを殺しますわよ。」

「・・・わかったよ。ちゃんと切るから。お前もう帰んのか?」


私は玄関へと向かい靴を履きました。


「ええ。やらなければいけないことがあるので。」


そうして私はサボの家を後にしました。
外で携帯電話を取り出し、ある人の番号にダイヤルします。


「もしもし、トラですか?調べて欲しいことがあるのですが・・・。」