見るも無残なみすぼらしいアパートメントにサボは住んでいるようでした。

シーナも以前“サボは酷いアパートに住んでいる”と言いましたが、ここまで酷いとは思ってもいませんでした。
階段は軋み、床板はもう何十年も張り替えられていないようです。

私はメールの指示通りにサボの部屋へと向かいました。
インターホンすら無い玄関。
仕方ないのでドアを直接ノックすると、そこにはボサボサの頭を掻き毟るサボがいました。


「おっせーよ。呼んだらすぐ来い。」


汚らしいヨレヨレの伸びきったTシャツ、その下は何ヶ月もお洗濯を怠ったようなジャージ。
酷いです。これは酷すぎます。
これが奏芽大病院のご子息だと信じられましょうか?


「入れよ。汚ねーけど。」


するとサボは咳き込みました。


「風邪なんですか?」

「おう。大したことねえけどな。こじらせちまってさ。」


メールで風邪だと一言言ってくれれば、もう少し気のきいたものを買ってきたのに・・・。
本当にヨーグルトしか買ってきませんでしたわ。

サボって変なところで意地っ張りなんですもの。


床にはゴミが散乱しており、サボはそれを足で部屋の隅へと寄せます。
お掃除したのは一体いつなのでしょうか?

私は爪先立ちでサボの部屋へと入りました。


「言われたとおりヨーグルトしか買って来ませんでしたわよ。風邪だとおっしゃってくれたらよかったのに。」


サボはテーブルの上にあったスプーンを取り、ヨーグルトに手をつけました。
スプーンはおそらく使用した後に洗っていない物でしょう。

汚らしい・・・。


「もうだいぶよくなってるから平気だよ。ヨーグルト食えば治る。」


その自論は一体どこからくるものですか?

まさかサボのお父様が教えてくださった最先端医療の賜物だなんて言いませんわよね?


サボは鼻をすすりながらヨーグルトを貪りました。