私がぼんやりと王子様を見つめていると、思い出したように彼が言いました。


「あ、そうだ。華道部の山際先生いるかな?」


私はその言葉にハッとしすぐにこたえます。


「あ、山際先生なら職員室にいらっしゃるかと。」

「そう。ありがとう。」


王子様は優しくそう言って微笑んでくれました。

ああ、私はなんて幸せ者なのでしょう。
幸せすぎて死んでしまいそう。

すると王子様の後ろで大きな声がしました。


「シーナ!こんなとこにいたのかよ。」


王子様のご友人でしょうか?
しかし王子様の背が高く、彼の後ろにすっぽりと隠れてしまって顔が見えません。


「あっちこっち探し回っちまったじゃねえかよ。」

「ごめん、サボ。山際先生を探してたんだ。」

「山際なら職員室でどえらい美人さんと話してたぜ。」


私はそれがイオのことだとすぐに悟りました。
やはりイオは美人で、この学校では有名なのだと実感します。


「今それを聞いたところ。」


王子様はそう言って私に目線を落とし、少し横へとずれました。

私は王子様のご友人を見て、文字通り言葉を失いました。


短髪の髪に、くりっとしたまん丸の目。

そこまではいいのですが、問題は彼の顔に無数についているピアスでした。

眉の上の辺りに三つ。
瞼にはリング形のものが一つ。
唇にも一つ。
よく見ると舌先にも一つ。
耳には様々な形のピアスがいくつもつけられていました。