猫とうさぎとアリスと女王

 それから岳志さんと僕との距離は徐々に縮まっていった。

何度か食事を一緒にしたり、理由も無くショップに遊びに行ったり、そんなことをしている内に段々と打ち解けてきた。

そんな僕と岳志さんを見て、母さんは“兄弟みたいね”と嬉しそうに笑った。

学校にも何度か迎えに来てもらったこともあった。
夜中に連れ出されて色んな所へ遊びに行ったりもした。
岳志さんの家に遊びに行くこともあった。


何故僕にそんなに良くしてくれるのか、それはさっぱりわからなかった。
兄弟がいなくて僕みたいな人間と遊ぶのが楽しいのかと、そんなことだと思った。

どっちにしろ理由なんてどうでもいい。
岳志さんと一緒にいると、トゲトゲした物が剥がされるような気がしたから。
優しくなれる気がした。


 一緒にいる時間が多くなり、岳志さんは僕を飛絽彦と呼ぶようになった。
僕も岳志と呼び捨てで呼ぶようになり、そのうちタケと呼ぶようになった。

年上とか年下とかそんな物が関係なくなるくらいに二人の距離は縮んだ。



その頃、ちょうど僕の中で新しい感情が生まれた。


タケと手が触れるだけで体が熱くなった。
笑顔を見ると胸が爆発しそうなくらいに高鳴った。
ふざけてじゃれあっていると、顔が有り得ないくらいに紅潮した。


体に触れたいと思うようになった。



その唇に自分の唇を重ねたいと、そんな疚しいことまで考えるようになった。








僕はタケを愛していることに気付いた。








男性に、恋をしてしまった。