猫とうさぎとアリスと女王

 「さっき見たとおり、俺は昔かなりダサくて当然女の子にもモテなかった。」


日比谷さんはそう言って僕の髪を切り始めた。


「最初は理美容の専門学校に行った。そこでも俺は一際目立ってたよ。ダサすぎててさ。

普通そういう学校の人間ってお洒落だろ?なのにめちゃくちゃダサいの。


そんなの時に、俺は“Shina La Soleil”に出会ったんだ。レディースの方な。
こんなに女の人を美しく見せる服があったんだと思った。

体のラインとか凄く綺麗に見せるし、何より着た女性が魅力的に見えた。
デザイナーは天才だと思ったよ。


それから免許だけ取ってその学校は辞めた。

それで服飾専門の学校に入学しようと思ってさ、その前に服をどうにかしようって思ったんだ。


それで“Shina La Soleil Homme”に行ったんだ。

バイトして貯めた金全部持ってさ、できるだけお洒落な格好して。

そこの店員さんが全部見立ててくれた。俺すごいダサい格好してたのに、対応もめちゃくちゃ優しくてさ。

変な目で見ないで俺に似合う服を真剣に選んでくれたんだ。

それでそこの店員さんが言ってくれたんだ。
“眼鏡もコンタクトに変えて、髪色も少し派手にしてみたらどうですか?いい物をお持ちなんですから勿体無いですよ”って。

それで俺の人生は変わったよ。
“Shina La Soleil”は俺の人生を変えてくれたんだ。」




美容室ではないこの場所に、当然鏡は無くて。



だから日比谷さんがどんな顔をして話しているのか見えなかった。