“Shina La Soleil”

それが母の立ち上げたブランドの名前だった。

最初は有名デザイナーの下で働いていた母が、後に独立してブランドを作った。
そして母は同じアパレル業界の男性と結婚。それが父。
父はShina La Soleilのメンズラインである“Shina La Soleil Homme”を手がけることになった。

Shina La Soleilのシンボルは、その名の通り向日葵。
ロゴの上部に太陽とも向日葵とも言えるシンボルマークのようなものが描かれていた。

最初はなかなか思うようにならなかったようだけれど、今では軌道に乗り有名ブランドの一員となった。
よくロゴの入ったショップバッグを持った人を見かける。

けれど僕はそんな物に全く興味が無かった。
アパレル関係の仕事にも、母が立ち上げたブランドにも。



 「飛絽彦、貴方は私のブランドを背負って立つ人間なんですからね。」

母さんは何度も僕にそう言った。耳に蛸ができるくらいに、何度も。
父さんはそんなに口うるさくは言わないけれど、同じようにそれを望んでいるようだった。

幼い頃はそれが当然だと思っていた。
友達は皆、有名な企業や家柄の跡取りだったし、僕も同じような道を歩むんだと。

けれど僕は次第にそんなことを思わなくなった。

幼い頃から絵を描くのが好きだった僕は、絵描きになりたいと思うようになった。
ゴッホやミレーやモネの絵を見るたびに胸が高鳴った。

僕はこの為に生きていると、そう思えた。


自分の進む道に確信を持った頃、僕はあの人に会った。



僕の人生を変えてくれた、一人の男性に。