猫とうさぎとアリスと女王

　シーナは何かに急かされるように手紙を開けています。
まるでプレゼントの包みを開ける子どものような顔をして。

私はそれを黙って見ていることしかできませんでした。


シーナは中の便箋を取り出し、目を通します。

しかしその表情はだんだんと変化し、悲しげなものへと変わっていきます。
先程までの表情が嘘のよう・・・。

私は心配になってシーナの横から手紙を覗き込みました。


「何が書かれていたのですか？」


私がそう尋ねると、シーナの手から力が抜けていきます。
そうして手紙が床へと落ちました。

私はそれを拾い上げ、読みました。


私の目に飛び込んできた文字を、何度も何度も読み返しました。
だって・・・こんなの信じられないのですもの。


「シーナ？一体、どういうことなんですか？」


シーナは私に背を向けて言いました。


「こっちが聞きたいくらいだよ。」

「だって結婚するだなんて・・・！！！」





そう、シーナのかつての恋人は今月末に結婚をするという内容の手紙を送ってきたのです。
勿論、女性との結婚です。

お腹の中にはすでに新しい生命が宿っており、今は二人で幸せな生活を送っていると。


「マコ・・・帰ってくれるかな。」


シーナはぽつりと呟きました。

けれど私は帰りたくはありませんでした。
きっとシーナは凄く傷ついているでしょう。だから何か力になりたいのです。

私では何も出来ないかもしれませんが、少しでも力になれれば・・・。


「でも、シーナ。私・・・」



「帰ってくれ！！！」





初めて聞いたシーナの怒鳴り声。

いつもの優しい声とは違う・・・冷たくて尖った声・・・。


私は涙が出そうになりましたが、こらえて部屋を出ました。


数時間前までは楽しい時間だった筈だというのに。
幸せで、何もいらないとさえ思ったのに。





今はその余韻も無いほどでした。