猫とうさぎとアリスと女王

 帰りはシーナがお車の手配をしてくださいました。


「ずっと歩きっぱなしだったし、荷物も多いから車を呼んだから。」


私は平気でしたが、せっかくのシーナの好意を踏みにじるわけにはいきませんでした。

シーナは本当に紳士で、Innocent Worldで買った私のお洋服もずっと持っていてくださいました。
その心遣いが凄く嬉しかったです。

今日という日を、私は忘れはしないでしょう。


お車に乗り込むとシーナとの距離が一気に縮まります。

私が緊張して小さくなっていると、シーナが先程のBABYの指輪を取り出しました。


「マコ、手出して。」


私が訳も分からずに手を差し出すと、シーナは笑って言いました。


「違うよ。右手じゃなくて左手。」


そう言ってシーナは私の左手を取り、その薬指に指輪をはめてくれました。

先程買ったばかりの桃色のバラリング。
ピンク地に銀色で彫られた薔薇の紋は、私の薬指で輝いていました。


「シーナ・・・。」

「よかった、ぴったりだね。サイズが合わなかったらどうしようかと思ってたんだ。」


私はその言葉が嬉しくて嬉しくて、涙目になってしまいました。

あの時お店で二色欲しいといったのは私の為だったのですね。
それを思うと自然と暖かいものが溢れてくるのです。


「僕、ちゃんと考えてるから。思わせぶりな態度を取ってるだけじゃないから。」


シーナは視線を落として言います。

私は黒いバラリングを取り、シーナの薬指に通しました。


「その言葉だけで、わたしは十分嬉しいです。
こうやって一緒にお出かけしたり、お話したり、小さなクジラの入浴剤を貰えるだけで幸せなんですよ?些細なことでも私は嬉しくなれるのです。

この指輪、大切にしてくださいね。
絵の具で色が変わってしまうくらい、ずっと身に着けて絵を描き続けて下さい。」


そう言うとシーナは柔らかく微笑んで私の指輪にキスを落としました。


「告白してくれたのが、マコで本当に良かった。」


その言葉の意味を噛み締め、私は小さく笑みをもらしました。