「それはそれほどまでのドラッグなのですか?」


キキは頷きました。


「今はどこの裏でも取引されてます。
ドラッグの名前はDay Dream。通称DDの名前で呼ばれてます。

摂取方法は様々。どんな方法でも平気で、鼻から直に吸い込めばかなりキます。
みんな、今までに無いクスリだって言ってました。」


DD・・・そんな名前は聞いたことがありませんでした。


「トラ、取り敢えずはキキを通して大本の足を掴んでください。
キキもそれに協力すること。

私の方でも色々と調べてみます。
何かおかしな行動は起こさないこと。単独行動は許しません。
何かあったなら私にすぐ報告してください。」


キキは以前にも増した気迫溢れる瞳で私を見ました。

トラも同様、力強く頷きます。


「それから、キキ。寂しい思いをさせて御免なさいね。
けれど私はもう戻ることは出来ません。」


悲しそうな目で私を見るキキ。

その目に耐えることが出来ず、私は目を逸らしました。


「けれど貴方を含め、仲間たちを思う気持ちは変わってはいません。

それだけは忘れないでくださいね。
自分勝手な言い分で大変申し訳ないのだけれど・・・。」


するとキキはまた大粒の涙をボロボロとこぼします。

泣き虫もちっとも変わっていないようです。


「私も、お姐さんのこと大好きです。忘れたことなんて一度もありません。

私の中ではお姐さん以外の人間が上に立つことは考えられませんから。
戻って来てくれるのならいつでも来てください。

みんな、誰一人としてお姐さんを罵ったりはしませんから。」

「有難う、キキ。」


その笑顔が、私の心の傷を和らげます。


大好きよ、キキ。

貴方のような人間に“お姐さん”と呼ばれ、私は心底幸せに思います。