そんなころ。奥村弘に出会ったのだ。
奥村氏の経営する画廊「OKUMURA」で、知人の絵を見に行った時だった。
弘はとても紳士的な人だった。
そして何よりも絵を尊重していた。
そう、絵を愛している事はもちろんだったが、売れるものを飾りたいといういう欲にだけ捕われている他のオーナーとは違った。
絵というものを、まるで生きたもののように繊細に扱ってくれていた。
「きみが、有名な桐山雄一くんか、お会いできてとても嬉しいよ」
奥村氏の好意的な感じは、普段雄一に挨拶してくる人たちと何か違っていた。
同じことをいっているのに、いやらしさがない。
雄一はすぐに奥村弘と打ちとけた。
そして絵の話をたくさんした。
だが、あの絵がいいだとか、こういう手法が好きだとか、そんな話は一切しなかった。
むしろ、絵を通した精神世界の話であったと思う。
そういう話を出来る人に出会ったのは、奥村が初めてだった。
雄一は父親のように、奥村を慕い、信頼していたのだ。
そんな流れで雄一の絵の、OKUMURAでの展示が始まった。
同業者の中では、どういう手をつかって彼を口説いたのだと、奥村をやっかむ者もいたが、奥村自体、そういうことは気にしていなかった。
雄一はそのことにまた救われた。
そして描きたいもの、描かなくてはならないものを
ひたすら描く、という使命に集中できたのである。
奥村氏の経営する画廊「OKUMURA」で、知人の絵を見に行った時だった。
弘はとても紳士的な人だった。
そして何よりも絵を尊重していた。
そう、絵を愛している事はもちろんだったが、売れるものを飾りたいといういう欲にだけ捕われている他のオーナーとは違った。
絵というものを、まるで生きたもののように繊細に扱ってくれていた。
「きみが、有名な桐山雄一くんか、お会いできてとても嬉しいよ」
奥村氏の好意的な感じは、普段雄一に挨拶してくる人たちと何か違っていた。
同じことをいっているのに、いやらしさがない。
雄一はすぐに奥村弘と打ちとけた。
そして絵の話をたくさんした。
だが、あの絵がいいだとか、こういう手法が好きだとか、そんな話は一切しなかった。
むしろ、絵を通した精神世界の話であったと思う。
そういう話を出来る人に出会ったのは、奥村が初めてだった。
雄一は父親のように、奥村を慕い、信頼していたのだ。
そんな流れで雄一の絵の、OKUMURAでの展示が始まった。
同業者の中では、どういう手をつかって彼を口説いたのだと、奥村をやっかむ者もいたが、奥村自体、そういうことは気にしていなかった。
雄一はそのことにまた救われた。
そして描きたいもの、描かなくてはならないものを
ひたすら描く、という使命に集中できたのである。


