「水野色です。みずの、しき。 色と書いてしきと読みます。 皮肉な名前です」 「どうして?いい名前だ」 「全色盲という病気をご存じですか」 失望されるなら、早いほうがいい。 彼は紅茶のカップごしに まっすぐにあたしを見ていた。 「なんとなく、なら」 「私は色を認識できません。 見るものすべてがグレースケールの状態です。 すべて、黒と白と灰色の濃淡でのみ 認識しているんです。だから、こんな あたしに色という名前をつけた親が 少しだけ、憎いんです」