「わるい、友達…」

呟いて、ネオを思い出す。
未成年が喫煙することは悪いかも
しれないけど、ネオは悪い人なんか
じゃない。これは言い切れる。

「いい友達なら、できたよ」

「そう。どんな子たち?」

学校での出来事や友達のことを
母さんに話すのは何年ぶりだろうか?
でもあたしの口からはどんどん言葉が
零れていた。めぐみのこと、かえの
こと、しおりのこと、トシ君のこと。
でもなぜかネオのことは言わなかった。
なんとなく秘密にしておきたかった。

母さんは、にこにことしながら
白ワインを片手に相槌をうつ。
本当に、嬉しそうに。

「色、変わったわね」

母さんはまた、同じことを言った。

「変わった?」

「ええ。前より笑うようになった。
 明るくなった。お友達のおかげね」

「そう、かもしれない」

「嬉しいのよ、すごく。仕事で色の
 側にいてあげられないし、色は中学
 に入ったくらいからあまり話して
 くれなくなった。普通のことだと
 受け入れてたんだけど、やっぱり
 少し寂しかったのよ。だから、
 こうして話せるのがとても嬉しい」

少し寂しげに笑う母さんを見て、
胸をつかまれたような思いがした。

「母さん」

「なに?」

「ごめんなさい。いままで。
 あたし、いつも目のこと必要以上
 にコンプレックスに思って、
 それで母さんに八つ当たりみたい
 なことしてて…あたしを、独りで
 育ててくれたのに。ごめんなさい」

そこまで言って言葉に詰まる。

あたしの想いの、全てだった。

「色」

やわらかな声がかけられて、
テーブルのうえで握り締めたあたしの
手に、暖かな白い手が重なった。