コツン。


岩を蹴ってしまった。だいたい15cm位の一枚岩。結構痛い。

道路にこんなものを置くなんて、古いというか、幼稚ないたずらだな。
その瞬間、僕の人生は変わったんだ。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


凄まじい悲鳴。ブレーキの音、何かがつぶれる音、爆発音。


一瞬だった。

皆消えた。

振り向いた僕の目の前に広がるのは、


トレーラーから燃え上がる一面炎の海だった。


「危ない!ほら、こっちに!!」

知らない人に腕をつかまれ、車に避難させられた。
間もなく消防車やら救急車やらパトカーが来た。


「君がここにいた少年だね。名前は?」

「小野棟慶介です。」


年をとった優しそうな警察官にいくつか質問をされた。
怪我はないか、どういう状況だったか、運転手の様子は見たか。

そして、簡単にyesかnoで答えて警察官が去ろうとした時、僕は思い切って聞いてみた。


「あの、皆は?」

すると警察官は振り返り、こう言った。

「皆?運転手以外の遺体は無かったけれど?他に通行人でもいたかい?」





いない?そんなはずはない。





そのまま警察官は去ってしまった。

僕はもう一度夜に事故があった現場に行ってみた。
もう人は居なく、静かな空間が流れた。


「何で、いないんだろう…」


きっと何かの間違いだったのかもしれない。
そうだ、友人の家に電話をすればいいんじゃないか。


早速、携帯電話を取り出してかけてみる。


コール音が鳴る。でも僕は、一瞬、確実に聞こえた。





‐ゴ メ ン ナ サ イ‐





という、幼い女の子の声。

その直後に友人の母親が電話に出た。きっとさっきのは風かなんかだろう。


『もしもし、慶介君?どうしたの?』

何だか嫌な気分が胸や頭を支配する中、僕は遠慮がちに答えた。

「あ、えと、○○君…の事で…」