痛みが残っていた。そんな中、目覚めた。
「う、うう。」
殴られた後頭部を押さえながら、リーグの父は立ち上がった。
「なんなんだったんだ、あいつらは?」
まだ、意識がはっきりしない。エリシアの事は忘れていた。
「こんな家に盗みに入るなんて、いったい何考えているんだか。盗みたくても、何も盗むものなんてないだろうに。」
黒ずくめと朱ずくめの者。そいつらを盗賊とばかり思っていた。そして、突然エリシアの事を思い出した。
「あ、エリシア。エリシアは?」
少なくとも、ここら辺の盗賊は殺しをしたりしない。殺せば、罪の大きさが全然違ってくる。捕まれば、自分が死刑になるかも知れないくらいの重罪だ。そんなリスクを犯してまで、わずかな金品を得ようとする者はいない。たいてい、柱か何かにくくりつけている。そんなところだ。
「エリシア、エリシア。」
返事がない。きっと、声を出す事が出来ないのだろう。家中を探し回った。
「エリシア。」
「エリシア。」
「エリシア。」
決して大きくはない家の中を、一カ所ずつ探した。しかし、見つからない。
嫌な予感がした。エリシアはがさつな性格だけど、一応それなりにかわいい女の子だ。もしかしたら人さらいに遭ったのかもしれない、そんな風に考えてしまった。
「大変だ。エリシアを探しに行かないと。村のみんなにも助けを、助けを求めなければ。」
リーグの父は、村長のところに向かおうとした。