驚いた。信じられなかった。まさか、こんな所で、こんな偶然によって、あの人に会えるなんて思ってもみなかった。憧れのあの人が目の前にいる。緊張しすぎて、前をきちんと見る事も出来ない。そんな状態だったけれど、お礼だけはしなきゃいけないと思っていた。
「あ、あ、ありがとうございました。」
緊張で言葉がどもる。
「ありがとうございました。」
リーグは至って普通だ。信じられない。
「ねぇ、なんでそんなに普通にしていられるのさ?」
「ん?何が?」
リーグはまるで気がついていない。今、目の前にいる人の偉大さに、まるで気がついていない。
「何がじゃないよ。僕たちを助けてくれたこの人、誰だか知らないの?」
「えっ、そんなに有名な人なの?」
リーグの言葉を聞くと、なんか恥ずかしくて自分の事じゃないのに、なぜか顔が真っ赤になった。
「ホント、すいません。こいつ、何も知らないみたいで・・・。許して下さい。」
老人はふたりの勢いに押されて、言葉を発する機会を失っていた。その老人がやっと口を開いた。
「こら、こら。ケンカするんじゃない。」
「あ、すいません。」
僕はすぐに謝った。憧れの人なんだ。絶対に嫌われる訳にはいかない。
「だいたい、わしの事を知っている方がかなり珍しいと思うぞ。そっちの背の大きい子が知らなくても無理はない。だから、気にする事ないからな。」
リーグの方を見て、そう言った。
「そんな事ないですよ。だって、パウパウ堂の社長さんですよ。すごいとか、そんな生半可な表現じゃ許されない、そりゃもうものすごい感じですよ。」
興奮が止まらなかった。
リーグもパウパウ堂と聞いて、興奮し始めた。
「お、おい。パウパウ堂って、あのパウパウ堂か?マジか?」
「だから、言ってるだろ。偉大な人だって。あのエーマリリスさんだよ。」