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“リストランテ ボンボヤージュに向かう”は、ブリアさんは動かす事が出来ない。“鮫、宙を舞う”の乗り心地は、もう正直勘弁してほしい。
となると、僕らは歩いて駅に向かうものだとばかり思っていた。

病院を出て、僕もリーグも絶句した。
そこにはまた怪しい乗り物?が控えていた。

「な、なんだ・・・これ・・・。」
大きさは大人の背丈の二倍くらいだろうか。
「なんて言うか・・・すごい趣味だね。」
「あぁ、悪趣味だ。」
ブリアさんもそう思っているのだろ。顔はそう言っている。でも、口には決して出さなかった。
馬の足、牛の足、男の足、女の足。無数の足が群がり球状になっている。さながら、足の博覧会と言ったところだろうか。
「“丸きムカデ、地を転がる”でございます。」
「名前も悪趣味だな・・・。」
やはり、ブリアさんは顔で語る。
「申し訳ございません。あいにく、他のものは出払っておりまして・・・。その代わりと言ってはあれですが、この“丸きムカデ、地を転がる”、乗り心地だけは極上でございます。」
その見かけからすると、乗り心地がいいと言うのはにわかに信じられない。
その顔を見て、ブリアさんは言った。
「百聞は一見にしかずと申します。さぁ、お乗り下さい。」
それを合図に、足が左右に広がる。そして、その中央に大きな口が現れた。ガバッと開き、僕らを待っている。
「どうぞ。」
乗り込みやすいようにと、舌がベロンと伸びた。
「リーグ、お先にどうぞ。」
「お前こそ、先に乗れよ。」
好んで乗りたい感じはしない。お互いに遠慮しあう。
そうしている僕たちを、ブリアさんは強引に押し込んだ。
ただ、メルツだけは喜んで先に乗っていた。