「ごめんなさいね。見送りにいけなくて。」
大事をとって、アイワイさんは病院に入院していた。検査やら、なんやらで結構な日数がかかるらしい。となると、さすがに僕たちも退院まで、居候するわけにはいかない。
「いいんです。気にしないで下さい。こんな目に遭わせちゃったのは・・・俺がいけないわけだし・・・。本当にごめんなさい。」
リーグは頭を下げた。
「そんな・・・。私が一緒に行こうって言ったんだし。それに、これは一緒に行かなくても・・・。」
「行かなくても?」
「ううん。なんでもないわ。気にしないで。」
何かを隠しているようだ。エーマリリスさんに、何かを聞いたのかもしれない。何度か、聞き出そうとしたが、話をごまかされてしまう。それが僕を余計に不安に感じさせた。

「リーグ、そろそろ行かないと間に合わないんじゃないかな?」
アイワイさんとリーグの会話に、僕はほとんど入れなかった。ちょっとした疎外感を感じた僕は、意地悪く二人の会話を遮った。
「あぁ。」
気のない返事だ。
「それでさ・・・。」
まるで僕の話を聞いてなかったのように、またリーグはアイワイさんと話し出した。
屈託のない笑顔。彼女の笑顔を、僕は見ているしかなかった。

病室にブリアさんが迎えにきた。今度こそ、本当のお別れだ。
「元気で・・・。」
「うん、連絡してね。」
ふたりは手を絡め合い、名残惜しそうにしている。
それを見て、ブリアさんは咳払いをした。
「・・・お嬢様。」
リーグも素直に引き下がった。僕がいい気味だと思ったのは言うまでもない。
「さようなら。」
アイワイさんは、いつまでもリーグを見ていた。

もしかしたら、エーマリリスさんが見送り来てくれない理由は、これなのかも知れない。僕は思った。