「でへっ。なんだ?」
蒸気で何も見えない。一メートル先も見えない。今はひたすら蒸気が晴れるのを待つしかない。
「ねね様?」
頭の悪いれれは、ねねに指示を仰ごうとした。
「いいかい、れれ。今は何もするんじゃないよ。へたすりゃ、私も巻き込まれかねないからね。」
「わかった。」
ねねに素直に従った。

なんだかわからないけど、今、僕は助かっている。周りに広がっている白い気体が、僕の服を濡らしていく。それが僕の目を覚ましてくれた。
「助かった?」
今一つ、ピンと来ない。白い世界が現実感を奪っているからだろうか。

何かが僕の耳を引っ張った。それも尖ったもので、引っ張られた感じだ。
「いたっ。」
見ると、僕の肩に銀色の鳥がとまっていた。
そいつを手で振り払おうとした。すると、エーマリリスさんの声が聞こえてきた。
「イバーエ君。」
「?」
「ここだ。今、君の肩にとまっている鳥の中から語りかけている。」
「エーマリリスさん・・・なの?」
にわかに信じられない。
「そうだ。君の力を借りたい。」
「僕の力?」
「ああ。今、君の目の前にいる黒と朱の服を着ている者。やつらは魔法使いだ。アイワイをあいつらから守ってやって欲しい。」
「守りたいよ。でも、ダメだった。ダメだったんだよ。」
僕がそう言った理由を、エーマリリスさんはおおよそ想像がついていたようだ。
「ダメって、まだ第二言も使ってないだろう?」
「あ・・・。」
さすがだ。僕より遙か先にエーマリリスさんはいる。
「第二言まで使えれば、魔法の影響を受けず、あいつらからアイワイを守れるはずだ。頼む。」
少しずつ向こうが見えてきた。もうすぐ、蒸気はきえてしまいそうだ。
「もう、時間がない。お願いだ。」