「それが飛び出していってしまって。ここにイバーエさんはおりません。」
「そうか。いいか、ブリア。遠隔で言術がつかえるのは、今の一回だけだ。これからそっちに向かっても、とても間に合わない。」
落胆した声だ。
「それでは・・・お嬢様は・・・?」
「だから、イバーエ君に助けを求めるしかない。彼の才能はずば抜けている。」
「そうでしょうか?私にはそうは見えません。」
ブリアはさっきの失敗の事を言っていた。
「仮にそうじゃないように見えてもだ・・・今は、彼に頼るしかない。」
その意見には賛同できる。ブリアは目の前で繰り広げられている事象の数々を、目に焼き付けていた。どうあがいても、自分の介入できるところはない。

蒸気はブリアの足下まで押し寄せてきた。もう、すぐ側で起きていることすら見られない。
額には軽く汗が滲んできた。

「とにかく柄についている鳥を、空に放て。あとはわしがやる。」
エーマリリスの言葉に、ブリアは素直にしたがった。
柄から鳥をはずす。さっきまで動く様子もなかった鳥が、突然羽ばたきはじめた。
「うわっ。」
ブリアは驚き、意図せず鳥を空に放った。