リーグは迷っていた。
連れてきてもらった店はとてつもなく広い。少なくともリーグのいる場所から、棚の端はまるで見えない。
「誰かいませんか?」
こんなに広い店内なのに、お客の姿も、店員の姿も見えない。ひとりで、目的の品を探さなければいけないとなると、気が滅入る思いだ。
「すみません、店員の方はいませんか?」
もう一度、呼んでみた。
しかし、リーグの声がむなしくこだまするだけだ。
「はぁ・・・。」
大きなため息の後、リーグは再び歩きはじめた。

「どこだ?どこだぁ?」
とりあえず、探してみた。でも、どこにもボアリソンは見つからない。
見つからないからと言って、このまま帰るわけにもいかない。怒られるのは、もうまっぴらだ。
リーグの背よりも遙かに高い棚を、ひとつひとつ虱潰しに探した。外にアイワイを待たしているのは、いつの間にか忘れていた。

値札に“リソン”の文字が見えた。走った。他にお客がいるわけでもないから、そんなに急ぐ必要なんてない。けど、リーグは走った。走らなければいけない気がしたからだ。
「あった。あったよ。」
かごの中に入っていたのを、思い切り手に取った。その勢いで値札が床に落ちた。
“アユリソン”。
虚しくなった。さっき間違えて買ってしまったばかりだと言うのに、また同じものを手に取ってしまう自分に腹が立った。
「・・・なんだよ・・・。」
しかし、よく見ると周りの棚は“リソン”ばかりだ。“ミヒリソン”に、“グリリソン”に、右を向いても、左を向いても、リソン、リソン、リソン・・・。
「もしかして・・・ここにあるんじゃないか?」
そうとしか考えられない。こんなに大きい店で、リソンと付く薬草が揃っていると言う事は、この場所が薬草売り場なのだ。
リーグは目を皿のようにして、ボアリソンを探し始めた。