恋めぐり

「母の形見なの。ありがとう」

無くしてしまったら後悔だけじゃすまなかったはずだ。

「いや、こっちこそ押しかけて済まなかった」

カインはオウリの手を離すと、帰ると踵を返した。

「待って。お礼にお茶、出すから」

「良いのか?」

「人の善意には敬意と礼を尽くせっていうのが母の教えなの、だからただで帰すわけにはいかないの」