「全く……」

シオはクス、と耳元で笑って。


「たかがゴキブリで、あんなに大騒ぎするなんて…ナチってば可愛いすぎ」


「なっ……」


私はシオの体を離して言った。


「馬鹿にしてるでしょ」


「ぜ〜んぜん?可愛いよ。キスしていい?」

シオの顔が迫る。



私は、美術品のようなシオの顔を、両手で頬を掴んで止めた。



「キスはダメ!」


「じゃ、その先は?」


「ダメだ、ってずっと言ってるでしょ!」



私達は恋人。

キスもまだ。
だけど、一応恋人。