バスに乗り換えたころ、


シオがうつらうつらし始めた。



「昨日、嬉しくてあんまり眠れなかったんだよね……ナチと、初めての旅行だから」


シオは眠たそうに手の甲で目を擦り、大きな口を最大まで開きあくびをした。


あくびをしたせいで、少し潤んだ目が、私の心に矢を突き立てた。


……あくびで胸キュンさせる、なんて。ずるい。


シオは外見もアイドルに劣らないし、中身だってこんなだからとてもモテるはず。


そんなシオを彼氏に持つ事が、少し自慢に思えた。
と同時に、ちょっぴり不安になった。

シオのことを好きになる女の子はたくさんいるってこと。


それは、彼女は私でなくてもいいってこと?

「いいよ、肩貸してあげる」
私は無性に、シオに優しくしなくては、という気持ちになった……。

「ん、すぐ起きるよ」


「ゆっくり寝なよ、まだまだ、先は長いんだから。着いたら、起こしたげる」