私は、今の記憶を抹殺しようと目を閉じる。


あれは、夢。悪夢。
私の部屋に、あんなおぞましい物が存在する訳ないもの!


野菜を洗った水滴がまだ両手に残っていたから、拙い手つきでエプロンの裾で拭った。



シオ、
早く戻って来て!


「ナチ。もぅ大丈夫だよ」

最愛の人の笑顔。それは、私に安堵をくれる、最大の魔法。

「手、洗った?」

「うん、台所洗剤で2回ほど。すっすいだ瞬間キュキュッと、ってね」


そして、彼は私を抱きしめた。