できるなら、シオにリードして欲しい。

さっきのジョークのようなものではなく、もっと真剣に。

そして、私が恥ずかしがることが出来ないよう強引に。

しかしシオの性格では、それは無理というもの。


…シオは完全に、のほほん天然王子様なのだ。


「ねぇ〜ナチ〜」
「何?」
「ゴキブリホイホイ買ってきてあげようか?」

シオは膝立ちになった。

「そうだね、また買い足しとこうかな……私お昼作るからさ、お願いしていい?」
「いいよ〜、自転車貸してね」

勢いよく立ち上がるシオ……は自分が積んでいたマンガの山につまづいてよろめき、私が趣味で弾くキーボードの脚で右足の小指を強打した。


「ぐっ……」


引き攣りながら必死で笑うシオを玄関まで見送り、私は料理の続きにかかった。


また、ネズミホイホイと間違わなきゃいいけど。


そんなことを考えながら。