それから、私達は『顔見知り』になった。 レジを打つほんの数十秒、私とシオは世間話をした。 そのほとんどが、 『今日は暑いですね〜』 とか、 『首相また代わりましたね〜』 とか、たわいもない話だった。 そんな話の中、私はシオの事を知っていった。 ワタナベシオン 渡辺紫恩っていう難しい名前であるとか、 大学で心理学を専攻している、とか。 彼の微笑みを見る度に、私の錠は粉となって流れていく。 内気な私が、こんなにも男性に心を開いたのは、 元彼、以来だった。