じりじりと暑い季節がとうとうやって来た。
嗚呼。夏だ。
頬をつたう汗を拭い、俺は今日も学校へ向かう。
肩に提げられた鞄は、まるで青春真っ只中の野球少年を思い出させるようなスポーツバックだ。

「うへぇ~っあっちぃー」

最近やっと暗記した校内図を思い出しながら、男は図書館へ向かう。





《ぼすんっ》

「いやぁ~極楽極楽ぅ~」

大きめでフカフカの椅子にどかっと座り、持参した折りたたみ式の団扇で扇ぎながら男は言った。


「あら。いいものを持ってるわね」


急に耳に届いた声に驚き、男は扇ぐ手を止める。
首を動かし、見つけた声の主はカウンターの中にいた。
にこにこと笑顔を絶やさないその女性は、けして相手に不快感を与えない。