「ふ~ん。【彼女たちの物語】【世に閉ざされたセカイ】【絶縁されし空間とは】・・・ねぇ。それで?【放たれた獣】?ねえ、こんなのがレポートに役立つの?」
「・・・いえ。それは別の用事で」
「そうなの?ま、いっか。で?この子供向けのは?【なかとそと】【戦うユーヤン】?」
「今日は質問が多いですね」男は少し困った顔をして、「甥っ子が、出来たんですよ。だからもう少し大きくなったら何を読んであげようかな~と思いまして」と言った。

とんとんっと処理し終えた本を整えながら、美琴はポツリと呟いた。


「でも、もし。君が読んであげられなくなったら?」


「大丈夫ですよ」男は自信満々に言葉を繋いだ。「絶対に」
「そう」
「はい」

男は軽くなった鞄を肩に下げ、机から栞を抜いて美琴に渡した。

「あら有難う」
「どういたしまして。じゃ、行きますね」