《どさっ》

「今日も相変わらず重そうね」
「ああジェニファー今日も相変わらず綺麗だね」

《ヒュンッ》
《さくっ》

「……?」

ちらり。と音のした方を見る。
今荷物を下ろしたばかりの机に、薄ピンクで花柄の可愛い栞が刺さっていた。
え?
嘘だろ?
ただのプラスチック製の栞だぞ?

「あ・・・ははっ。あはははは。いやだなぁ~美琴さんっ冗談ですよぉ~じょ・う・だ・ん!!」

美琴はにぃぃぃっこりと微笑んで、男に言った。

「あら?何のことかしら?」
「あははっはは……。なっ何のことでしょうねー」
「んもう。遠慮しなくていいのよぅ。ただね、外が暑すぎてここに来るまでにもっとお馬鹿に鳴ってしまった困ったちゃんを、助けてあげようかなぁ~って、ね……」

握られた栞は・・・見なかったことにしよう!

「で?」美琴は言った。「それは返却って事でいいのかしら」
「あっはい。お願いします」

いそいそと鞄の中から分厚いハードカバーの本を8冊、専門雑誌を3冊、子供向けの昔話の本を2冊出し、カウンターに乗せた。
美琴はそれに付いたバーコードを素早く読み取る。
重いはずのハードカバーの本もてきぱきと片手でこなす。