その声は言う。


≪ああ。貴方が選ばれし【語り手】なのね≫


と。

【語り手】とは何か。
そもそもコレは夢なのか。
現実なのか。


その声は笑う。

≪はははっ現実よ。正真正銘ね≫

と。

「君は誰なんだ?」と声を出さずに聞いてみる。
それで伝わると、自分は知っていた。
いや、今理解した。
この相手とは声帯を通さずとも話ができる。脳で意識するだけで会話が成立する。
不思議だ。
とは思いもしなかった。

その時は。

今となっては、そう思わなかったこと事態不思議なことなのに。
でも、その時の俺は分からなかったんだ。
だから。

「君は誰なんだ?」

と、聞いたんだ。